ジャズヴォーカルについての独り言!     岩倉千賀子

 

映画『ラウンド・ミッドナイト』のなかで、主人公(デクスター・ゴードン)がビルの谷間で“ニューヨークの秋”を吹いている。ふと、マウスピースから口を離すと、「歌詞を忘れてしまった」と静かに呟いた。
私は、このシーンがたまらなく好きだ。

 私はテナーサックスを吹いているが、歌う、という点でスタンダードナンバーを吹くのは難しい。だから、なるべく歌詞を読んで先ず自分の声で歌ってみる事にしている。だからといって、なかなか上手になるものではないけれど、そのおかげでジャズヴォーカルの上手、下手が少し分る様になってきた。 

 英語は日常語ではないから、意識して聞かないと聞き取れない。でも自分が覚えていたり、一度でも意味がわかった曲は、ぐっと胸に迫って来るものがある。やはりヴォーカルは、歌詞が浮かびあがらないと!と思う。

 日本人のヴォーカリストは、やはりここに大きな問題があるのだと思う。
歌詞をきちんと理解し、歌詞に感情を込めることが大切だと思うのだが、この表現力という点では、役者のかたの歌は、いいな〜と思う事が多い。
何と言っても、シナトラ!!
ひとつの歌のなかの、あるメロディーの部分で、「う〜ん、すごい!!」と思わず言ってしまったりする。でもこれって、若い時には気が付かなかった。年をとったんだな〜と思う。

 色々な経験を心の引き出しに、その香りや雰囲気と一緒に一つずつパックにしまっておく。必要な時に取り出して、歌や演奏の味付けに使う。
いま、沢山のヴォーカリストがいるけれど、もっともっと、いい歌が聴きたい。

 なんだか、生意気な事を書いてしまったけれど、ジャズヴォーカルで不思議な事がある。
 
私が初めてジャズヴォーカルを聴いて泣いてしまったのは、ジョージ・ルイスの厚生年金会館でのレコーディング版。バンジョーのパパ・ジョーの歌った、“セント・ジェームス病院”だ。意味は分らなかったけれど、何故かこのレコードを聞いてポロポロ泣いてしまった。そして思った。これが“ジャズ”なんだ! ジャズは最高だ!と

 なんだか独り言も、酔っ払いの様になって来たので、このあたりでしつれい。

 


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