石井満のJAZZ VOCALの聞き方

 

先日、“咲蘭房”でのライブで細川綾子さんのヴォーカルを聞きました。

エラが好きで、エラに似ていると言われるのがとても嬉しいと、ご本人が言うだけあって、歌い廻しから、声のかすれ具合まで、本当にそっくり。ほとんどの歌手がエラの影響を受けているはずですが、こんなに上手な人はめったに居ないと思いました。 

私が細川さんの歌を聞いたのはこの日が初めてで、日本のジャズヴォーカルも捨てたもんじゃない、と言うのが私の印象でした。

『思い出のサンフランシスコ』を聞きながら気が付いたのですが、原曲では、ヴァースの
I’m going home to my city〜 となっているところを、彼女は、I’m coming home
と歌い替えていました。意図的に変えたかどうか私には知るすべもありませんが、

そんな所に細川さんのアメリカやジャズに対する、思い入れを感じて、とても良い気分にさせて頂いたひと時でした。

 歌詞を替えて歌うのはよくあることで、ヴォーカルを聞く時の、私の楽しみの一つでも
あります。ですから、なるべく原曲に近いものを探して聞くようにしています。

I get a kick out of you” の中で、シナトラは元詞通り「コカイン」と歌ってましたが、
時代が変わるにつれ「スペインの香水」と替えています。(かってコカインは合法だった)

この曲はライブでよく演奏されるので、その部分にくるといつも、どっちで歌うかな?
と耳がいってしまいます。原曲を知っていれば、どう変えたのか分ります。

“ジャズに名曲ナシ”とよく言われますが、
何の曲をやるかよりも、どうやるか、の方に興味があります。

昔ドラムを習っていた頃先生から、テーマを自分で歌いながら練習しろ、と言われたのがきっかけで、本格的にスタンダードを聞き始め、なるべく原曲に近い元歌を探す様になりました。中でも、エラの“作曲家別ソングブック”、これが一番役に立っています。原曲をほぼストレートに歌っているだけなのに、こんなに感動させてくれるエラはすごい!!

ちなみに、初期のベイシーバンドのドラマー、ジョー・ジョーンズは、インタビューの中で、“私は新曲を演奏する時は、必ずスコアと歌詞をもらって、まず歌詞を読み、次に自分で歌ってみて、その意図する所を把握してから演奏する“と言っております。

ドラマーが、そう言っているのです。このインタビュー記事をみて、私は目からウロコ!!

歌手でさえ、本当に理解しているのか疑わしいと思う時もあるのに!!

 その後、原曲に一番近い歌を探してるうちに気が付いたのがミュージカルビデオでした。おおよその曲はミュージカルから出ている。

C・ポーター、I・バーリン、R・ロジャース、J・カーン、G・ガーシュイン、
この五人を押さえると大半がカバー出来ます。

“ザッツ・エンターテイメント”をガイドにして、ミュージカルビデオをボチボチ集めているうちに、フレッド・アステアの為に書かれた曲が多いのに驚きました。
アステアのミュージカルは、スタンダードソングの宝庫と言えます。また、アステアの声域に合わせて曲作りをしてある為、無理なく歌える様になっています。

ダンスやタップの方に目が行って、歌手としてのアステアの評価は低い様な気がしますが
私は、自然に見せる、聞かせる、と言う意味で、こんな素晴らしい歌手は居ないと思って
おります。今では、フィルモグラフィーに出ている、アステア・ミュージカルは全て
カバー出来る様になりました。

 “日本のジャズヴォーカル”、がテーマのはずだったのですが話がよれてしまいました。

物書きの才が無いので上手くまとめられませんが、“私のジャズヴォーカルの聞き方”みたいな所でお許しを。

とにかく、出来るだけ作曲された頃に近い原曲をよく覚えて、そこからのバリエーションやフェイクを楽しむ。というのが私のやり方です。

ヴォーカルのルーツに興味を持ったおかげで、ブルース史、ジャズ史、アメリカ史、
さらに広がって、イギリス、ケルト、ローマ、今では、およそジャズとは関係の無い所迄
興味が広がってしまいましたが、それも又楽し!です。

2001/04/16 記

石井 満

 


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